プルトニウム終結ゲーム:
再処理を止め、固定化を始めよ
アージャン・マキージャーニ

余剰となった軍事用プルトニウム問題は、東西冷戦が終わった後一気に浮上した。ソ連邦が崩壊したことにより、これらのプルトニウム(および戦術核弾頭)が闇市場に出回る懸念が広がったからである。しかし、これと等しく重大な潜在的核拡散問題をもたらす民生用の分離プルトニウム問題は、この十年間さほど注目を浴びることもなく静かに進行してきた。
原子力産業は民生用プルトニウムが有用な燃料になると見込んでいた。しかし現実的には、世界の経済的諸事情によって、この望みは打ち砕かれた。同様に、大量の軍事用プルトニウムの備蓄を防衛資産とみなす考えも、政治的な諸事情から時代遅れとなっている。
民生用、軍事用のいずれから分離したプルトニウムも、その同位体組成を問わず、基本的に核兵器製造に利用できることから、プルトニウムは民生、軍事、双方の原子力産業をつなぐ最も重要なリンクの一つになっている。分離プルトニウムの管理は、したがってその由来を問わず、万全な核不拡散政策をとる上で決定的な意味をもつ。
余剰軍事用プルトニウムに関しては、IEER、米国科学アカデミー、その他による相当数の文献を含む報告が多数ある。IEERは2001年1月、民生用プルトニウムの管理・処分を余剰軍事用プルトニウムの処分といかにして統合できるか、あるいは、統合すべきかを述べた報告書を発表した。本稿はその要約である。詳細は報告書全文を参照されたい。[注1]
プルトニウム239は、天然に存在するウラン238を原子炉内で照射することにより作られる。軍事目的でこれを行う場合は、原子炉で照射した燃料とターゲットロッド(集合的に、照射済燃料あるいは使用済燃料とよぶ)からプルトニウムを分離する。プルトニウムは民生用の原子力発電でも産生されるが、それは、ウラン238が燃料中に大量に存在するためである。このような原子炉が数多く存在する(全世界で400基以上)ことから、民生用原子力発電で作り出されたプルトニウムの総量は、核兵器プログラムのもとで製造された量をはるかに凌いでいる。1999年末の時点で原子力発電において製造されたプルトニウム総量は1,400トンであるのに対し、核兵器プログラムのもとで製造されたプルトニウムは約270〜300トンである。
プルトニウムは原子炉の燃料としても利用が可能である。核燃料として使用するには、まず、照射済燃料棒中の残留ウランと核分裂生成物からプルトニウムを分離する必要がある。この分離を行うための化学的プロセスを一般に「再処理」とよぶ。軍事用プルトニウムのうち政府備蓄は約250トンである。残りは核実験に使用され、実験で核分裂しなかったプルトニウムは環境中や核実験用の地下壕に飛散したか、あるいは廃棄物として貯蔵ないし投棄された。民生用プルトニウムのうち約280トンは分離されたが、残りは使用済燃料中にある。分離された民生用プルトニウムの一部はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料として使用され、残りは貯蔵されている。現在、世界に存在する民生用分離プルトニウムの在庫量を表1に示す。
[表1]分離された民生用プルトニウムの国別推定貯蔵量(単位トン)[注参照]
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国名
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分離プルトニウム量
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貯蔵時期
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備考
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フランス
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〜80
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1999年末
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フランスが貯蔵している他国の量も含む
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英国
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78.5
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2000年3月31日
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英国が貯蔵している他国の量も含む
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ロシア
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30
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2000年
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日本
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5.3
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1999年末
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米国
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1.5
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2000年
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その他
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11
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1998年末
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ドイツ、ベルギー、インド
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総量
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〜206
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総量は2000年末までに210トンをこえる見込み
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注)未照射MOX燃料の形態のプルトニウムを含む。
民生用プルトニウムの貯蔵量は毎年ほぼ10トンずつ増加しているが、これはMOX燃料として消費される量が、分離されるプルトニウムの量を大幅に下回っているためである。軍事用のプルトニウム備蓄は毎年約1トンずつ増加している。これは主としてロシアと米国によるものだが、両国ともに軍事目的ではなく環境のために再処理を行っていると主張している。この割合でゆくと、民生用分離プルトニウムの貯蔵量は今後数年で軍事用プルトニウムの貯蔵量を上回る見通しである。これらはすでに膨大であり深刻な核拡散問題となっている。プルトニウム処分に関する米国政府省庁間ワーキンググループは、明瞭にこう述べている:
「プルトニウムの同位体(同じ元素の原子核に含まれる中性子数が異なるもの)は、どんな組成であっても本質的に核兵器製造に利用可能である。ただその組成により利便性や効率が異なる。」[注2]
核兵器級プルトニウム1トンからは約200個の原子爆弾を製造でき、洗練された設計ならもっと多くの核爆弾が作れる。原子炉級プルトニウムから同じ爆弾を作るには約40パーセント多くの量が必要である。それゆえ、貯蔵されている民生用プルトニウムからは、長崎を破壊したのと同サイズの原子爆弾が3万発以上も製造できることになる。
民生用プルトニウムの現状をもたらした背景
第二次世界大戦後、長い間、プルトニウムは核兵器の世界で力を示す通貨と見られていた上に「魔法の」エネルギー資源であるとも考えられてきた。これは、増殖炉とよばれる特殊な原子炉で、ウラン238が、原子炉の運転に実際に必要とされるより多くの量のプルトニウム239に転換されるからである。つまり一定期間の後には、発電が行われたにもかかわらず、燃料(プルトニウム239)が当初より増えているのである。[注3]
しかし、プルトニウムが「魔法の」エネルギー資源(ただ同然の安いエネルギー)と思われていた1950年代の多大な期待は、過去25年の間に深刻度を増してきた数々の実際問題により暗礁に乗り上げている:
1. ウランが予想をはるかにこえて豊富に存在していることが判明し、ウラン価格が(1970年代の一時的な上昇を除き)急落した。現在の価格は史上最低水準に近い。
2. プルトニウム経済を生み出す選り抜きの技術として、最大限の努力と資金が投入されてきたナトリウム冷却型増殖炉は、制御技術、経済性の実現ともに極めて困難であることが判明した。大型プラントの建設費だけで40年間に200億ドル(1999年ドル相場)をこえたが、技術的問題と高コストはいまだ解消されていない。世界各地で大型ナトリウム冷却型増殖炉に投じられた資本支出のおよその額(1996年ドル相場)と、その状況を表2に示す。
3. 分離された民生用プルトニウムは核兵器製造に利用できるため、プルトニウム経済の発展はウラン燃料を用いた原子力発電と比べかなり大きな核拡散のリスクをもたらす。
4. 再処理コストが高いこと、それ故プルトニウムのコストもウランより相対的に高くなることが証明された。
5. 再処理工程では大量の放射性廃液を放出し、その他の放射性廃棄物も生じる。このことが、環境問題や安全・健康上のリスクを生み出す。
[表2]熱出力100メガワット(MWt)級以上のナトリウム冷却型増殖炉の資本コスト
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原子炉・国名
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出力(MWt)
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運転期間[注a]
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資本コスト(単位:百万米ドル[1996])
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| Fermi 1(米国) |
300
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1966-72
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403
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| BN350(カザフスタン) |
1,000
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1972-
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724
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| フェニックス(フランス) |
560
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1973-
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395
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| Dounreay PFR(英国) |
600
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1974-94
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〜395
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| 常陽(日本) |
100
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1977-
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144
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| KNK-2(ドイツ) |
〜100
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1977-91
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107
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| BN600(ロシア) |
1,470
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1980-
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918
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| FFTF(米国) |
400
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1980-1993
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1,397
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| スーパーフェニックス(フランス) |
2,900
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1985-98
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6,028
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| もんじゅ(日本) |
714
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1994-1995
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5,134
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| SNR-300, Kalkar(ドイツ) |
762
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運転せず
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4,272
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| 合計 |
8,906
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-
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19,917[注b]
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注a)運転開始年は臨界に達した年とした。
注b)この合計は、未完のまま廃止されたClinch River増殖炉(1996年ドルで約30億ドル)その他の未完成原子炉に投じられたコスト約16億ドル(現行ドル)を含まない。
以上のような構造的要因に加え、近年、民生用の再処理とMOX燃料の継続的利用にとって、大きなマイナスとなる事件が起こった:
1. 1998年後期にドイツで成立した社民・緑の連立政権がドイツの脱原発を決定した。現時点でみる限り、脱原発スケジュールは既設の発電所の寿命にほぼ対応した、比較的緩やかなもののようだ。しかしこの決定に伴い、ドイツの使用済燃料の再処理も必然的に停止される。これは、フランスのUP3(国外の使用済燃料を再処理するための施設)と、同じく国外の顧客受け入れを約束している英国核燃料公社(BNFL)配下の再処理施設THORPの運転を継続させる根拠を、一層ぐらつかせるであろう。
2. ドイツ政府の原発廃止とそれに伴う再処理廃止の決定が、フランスその他の諸国で波紋を広げており、これらの国々でも、原発廃止は以前ほど政治的に難しい話題ではなくなった。とくにフランスではプルトニウム利用への補助金支出が注目されている。
3. 英国上院科学技術委員会[The Science and Technology Committee of the British
House of Lords]が、1999年、英国の民生用プルトニウムを廃棄物とみなすべきであるという結論を下した。これはプルトニウム燃料に対する英国の補助金支出見通しに大きな打撃を与えた。
4. 1995年、日本の増殖原型炉「もんじゅ」で、臨界に達し1年半程しかたたないうちにナトリウム火災事故が、また、1999年9月には東海村の工場で臨界事故(作業員2名が放射線被曝により死亡、その他にも大勢が被曝した)が発生したことで、日本のMOX燃料使用計画への反対が高まっている。東海村の事故が契機となって、今や日本の原子力の将来は以前よりずっと疑問の余地があるものとなった。
5. 日本に輸送されたMOX燃料の一部を含め、英国核燃料公社によるMOX燃料の品質管理データの一部にねつ造があったことが暴露され、英国では再処理のみならずMOX計画も混乱に陥った。
6. プルトニウム経済にもっとも強く執着していたロシア原子力省[Minatom]が、引き続く資金難から、野心的な増殖炉計画を自力で達成できなくなった。ロシアには民生用のMOX燃料製造施設もない。
7. MOX燃料使用を推進する最近の要因は軍事部門に由来する。2000年9月1日に締結された米ロ協定は、西側からの十分な資金提供によって見込み通りに進むことができれば(下記参照)、ロシアでプルトニウム燃料サイクルのインフラに欠けている唯一の溝を埋めるものとなる。この協定は、両国が余剰と宣告した軍事用プルトニウムを、MOX燃料として主として軽水炉で使うことで、核兵器に転用できない形に転換することを目指している。ロシアはさらに、MOX燃料製造施設で増殖炉用のMOX燃料も製造できるようにしたいと考えている。しかし両国は、事故時の対応を含めて、この計画の責任の所在をだれにするかで、いまだ合意に達することが出来ていない。協定はこの問題を今後の交渉課題として積み残したままである。
これまでの歴史や、最近の動向・出来事からもたらされた結果は、急速に貯蔵量が増え続ける膨大で不経済な民生用プルトニウムをどうするのかという政治的な大問題である。BNFLのデータ改ざんや安全・環境上のスキャンダルが示したように、一般市民の信頼や尊敬を失った組織によってプルトニウムが貯蔵され、その関連施設が運転されていることが、事態をますます悪化させている。こうした要因が、政府とプルトニウム関連企業の経済性を軽んじた意思決定によってもたらされる諸問題を一層深刻にしている。
プルトニウム産業が補助を求め続けるのはとくに驚くことでもないが、その主張に合理性があるはずはない。世界全体で千億ドルの桁にのぼる莫大かつ不当な資金が、この50年、プルトニウム経済を生み出すために使われてきた。その大半を投じた大型増殖炉は今やほとんどが閉鎖されている。残りの金額の大半は、再処理とそれから生まれる不経済なプルトニウムをMOX燃料として使用するために投じられた。これらのコストを表3にまとめておく。補助金支出は止まりそうもないが、予見しうる将来、多くの未解決問題を解決できる合理的方法もない。
[表3]プルトニウム燃料開発のために世界が投じた概算純コストのあらまし
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分類
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コスト(1999米ドル)
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備考
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| 大型増殖炉 |
〜200億 |
100MWt以上;完成炉のみ |
| 未完成増殖炉、小型増殖炉 |
純運転コスト 〜100億? |
純運転コストとは売電収入を超過した分の原子炉運転コストである |
| 再処理とMOX |
〜400億 |
ウランからMOX燃料への転換の純対価の概算 |
| 六ヶ所村再処理工場建設 |
〜200億 |
公式には2005年完成予定の未完施設 |
| その他過去のコスト(研究開発、インフラ、過去の廃炉、民生用プルトニウム長期貯蔵) |
数十億 |
閉鎖再処理工場(ニューヨークWest Valleyなど)、過去の再処理および増殖炉廃止、増殖炉・再処理関連の研究開発など |
| 過去のコスト小計 |
〜千億 |
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| 今後の再処理・MOX継続の純コスト |
〜20億/年 |
現行相場で重金属・再処理千ドル/t と想定 |
| 蓄積されたプルトニウムの貯蔵コスト |
40億/年 |
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| 今後の廃炉と民生用プルトニウム処分のコスト |
計数十億〜数百億 |
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経済性と安全性のあらゆる合理的な基準からみて、民生用プルトニウム燃料産業と増殖炉産業は少なくとも10年前に完全に姿を消すべきであった。それなのに民生用プルトニウムの分離は今も数カ国で続行されている。増殖炉計画を存続させている国もいくつかある。既設原子炉の燃料にプルトニウムを利用すること(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料、すなわちMOXとして)が1990年代にさかんになり、プルトニウム燃料産業はこれによって新たな一連の補助を獲得した。
補助やこのような非現実的な計画がなくならない理由は、遠い将来にプルトニムがエネルギー源として利用できるようになると熱心に信じている人々が、政治経済の舞台で力をもっているからである。実際に彼らは、軽水炉でMOXとして使用されるプルトニウムの量を大幅に増やすことに成功した(軽水炉はもっとも一般的な民生用発電炉だが、大半はMOX燃料向けに設計されていない)。フランス一国だけでも、年間約10億ドルもの補助金が民生用プルトニム燃料産業に投じられている。
軍事用プルトニウムの処分
プルトニウム燃料への期待は冷戦終了後の流れにうまく乗った。米国とロシアは、両国が余剰であると宣言した核兵器用プルトニウムの大部分を、MOX燃料として原子力発電で利用することを提案している。これによって、プルトニウム燃料産業は新たに核不拡散の名目で莫大な補助金を手にし、両国の原子力行政及び産業は、再処理と増殖炉計画を続行する根拠を得た。とりわけロシア原子力省は、西側の不拡散資金で行なうインフラ整備を自国の増殖炉プログラムに利用するというあからさまな計画をもっている。
ロシア原子力省は、米ロによる核兵器用プルトニウム処分計画を「将来の核燃料サイクルの完成に向けた技術開発の第一歩とみなければならない」とはっきり述べている。その中には「高速炉(増殖炉の別名)でのMOX燃料利用」も含まれる。[注4] 米国は、ロシアがこのようなシステムをもつことに合意したが、1970年代には、同じことを核拡散の危険が大きすぎるとして拒否していたのである。
余剰の核兵器級プルトニウムを燃料にして民生用原子力発電で利用することは、核拡散に加え、安全面での懸念も引き起こす。民生用原子炉の大部分はウラン燃料用に設計されたもので、MOX燃料用に設計されていない。このような原子炉は制御を強化するよう改修される必要があるだろう。原子力発電の使用済燃料から分離されたプルトニウムは、現在、フランス、ドイツ、ベルギー、スイスで原子力発電のMOX燃料に使用されているが、核兵器級プルトニウムはいまだかつてMOX燃料として原子炉で使われたことはない。核兵器級プルトニウムから製造するMOX燃料の安全評価には、原子炉級プルトニウム用に開発、テストされたコンピュータ解析コードが用いられることになるだろう。核兵器級プルトニウムと原子炉級プルトニウムの同位体組成の違い、MOX燃料の装荷パターンの違いから生じる安全上の懸念をどう解決するのかは、不明瞭なままである。
MOX燃料は、プルトニウムとTRU核種(超ウラン核種)の含有比率が高く、そのためMOX燃料を用いた原子炉の事故は、ウラン燃料を用いた原子炉事故より深刻なものとなるだろう。ロシアは安全規制面での整備が比較的脆弱で、安全上の懸念にどう取り組み、どう解決するのか、疑問がある。その上、MOXの新燃料が、軍事並みの厳しい警備がなされない状態で道路輸送され、民生用の原子力発電所に貯蔵されるようになれば、新たな核拡散のリスクも生じてくるだろう。
固定化
仮に民生部門および軍事部門においてプルトニウムの分離がただちに停止されても、すでに分離された民生用プルトニウムと余剰の軍事用プルトニウムの管理という大きな問題が残る。したがって、民生用燃料の再処理を停止すると同時に、すでに分離された民生用プルトニウムと余剰軍事用プルトニウムを、安全、健康、環境保護に反することなく、核兵器利用不能な形に速やかに転換する計画の策定は危急の課題である。
IEERが先に行った分析で、固定化という一つの方法が、分離したプルトニウムを核兵器利用不能な形にする上で、安全、迅速かつ安価な方法であることを示した。[注5] 固定化の第一目的は、核兵器不所持国やテロリストグループによるプルトニウムの窃盗を防止することにある。分離した民生用プルトニウムと余剰の軍事用プルトニウムをすべて固定化するという発想がこれまで進展をみなかった理由は二つある:
ロシアはプルトニウムを燃料に利用する以外の方法を受けつけないだろうとする考えが一般的なこと。そこから、MOX燃料にするという選択肢が、ロシアの余剰プルトニウムを核兵器利用不能な形(この場合は使用済燃料)にするために不可欠とみられている。
西側および日本のプルトニウム推進派が、不拡散資金によるMOX燃料製造のための基盤整備を強固に支持してきたこと。
ロシア原子力省が西側資金によるMOX燃料製造のための基盤整備を望んでいるのは確かであるが、だからといって、別の提案を行った場合、それをロシアの政府や社会のすべての層が拒否するということではない。たとえば、ロシアで分離された民生用プルトニウムと余剰の核兵器用プルトニウムをすべて購入し、国際的保護のもとで、これをロシア国内で固定化して貯蔵するという案は、これまでロシア政府に対して一度も公式に提示されたことはない。プルトニウム80トンを購買するコストは、理論的に最大に見積もっても(これらがゼロコストで魔法のようにMOX燃料に転換できると想定して)、せいぜい20億ドルである。[注6] プルトニウムを固定化するコストもこれと同程度である。既存の相互核安全保障協定[cooperative
nuclear security arrangements]は、ロシアが、これまで取り組んでこなかった計画を前向きに検討することを示唆している。ところが西側は、ロシアの余剰プルトニム購買という提案をロシア政府に公式に提示してはいない。このようなアプローチは、世界の全域において再処理を完全に停止することとともに、核不拡散、安全および環境の見地から緊急に検討するに値する。
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