IEER | 「エネルギーと安全保障」日本語版



廃棄物の核変換(消滅処理):
核の錬金術というギャンブル

アニー・マキジャーニ、ハイシャム・ゼリフィ

オリジナル: "Waste Transmutation:The Nuclear Alchemy Gamble", Science for Democratic Action VOL.8-3

 

「分離核変換の研究は我々みなにとってなかなか誘惑的なものである。これは、新たな再処理技術、新たな燃料開発、さらなる核についてのデータ、新たな原子炉および照射施設、新たな廃棄物処理および処分の概念、そして特別な安全性研究などを必要とする。全世界の核科学・核技術の分野にとって挑戦の機会である。」

「しかしこの約束の地への航海は、たくさんの山々のある荒れ地を通るだろうし、地平線の彼方は期待するほど明るくないかもしれない、と誰もが気がついている。」

―――ポール・ガバート[Paul Govaerts]、SCK-CEN (ベルギー原子力研究センター)。「第5回アクチニドおよび核分裂生成物の群分離・核変換に関する国際情報交換大会 」(モル、ベルギー、1998年11月25−27日)の歓迎の挨拶より。

 「(核変換)計画は原子力の研究開発全般を再活性化させ、原子力オプションを健全な状態で21世紀に持ち込もうと邁進する有能な若手研究者を惹きつけるだろうと期待される。」

―――「オメガ計画:日本の群分離・核変換研究開発計画」、経済協力開発機構/原子力エネルギー庁『アクチニドおよび核分裂生成物の群分離・核変換:現状および評価報告』(パリ:OECD/NEA、1999年)253頁より。

 

原子力産業が直面している最大の障害の一つは、民生用原子炉から廃棄される使用済燃料、または使用済燃料からプルトニウムを抽出することで生じる高レベル廃棄物として生み出される放射性廃棄物をどうするかというものである。放射性廃棄物を一般公衆および環境から隔離するために大半の国が選択したオプションは、地下の深地層処分場への埋設である。

しかし、使用済燃料と高レベル廃棄物には、半減期がきわめて長い(数千年から数百万年)多数の放射性核種が含まれるため、これほど長期にわたり廃棄物を確実に隔離するのは不可能であるとされている。一部の長寿命の放射性核種の漏出の可能性に加え、人体への侵害(意図的であろうとなかろうと)を防ぐ保障も不可能である。 表1に問題となる主な長寿命放射性核種を示す。

[表1]:問題となる主な長寿命放射性核種

放射性核種(半減期の年数、有効数字2桁)

タイプ

影響

核変換の可能性

核変換に伴う諸問題

ストロンチウム−90(29)

中寿命核分裂生成物

廃棄物に初期熱を発生させる。処分場の収容力を決定づける。人体への侵入汚染あり。人体中でカルシウムのようにふるまう

なし

中性子吸収断面積が小さいため核変換はできない。使用済燃料および高レベル廃棄物の発生熱の大部分を占めるため、核変換による処分場収容力の拡大を制約する。

セシウム−137(30)

同上

人体中でカリウムのようにふるまう点を除き同上。また、核拡散に対する放射線バリヤー

なし

同上。また、核分裂物質から分離すると、核拡散防止のための放射線シールドが除去される。

スズ−126(100,000)

長寿命核分裂生成物

地下水への放出

困難

使用済燃料や高レベル廃棄物からの分離は困難。核変換には長時間がかかる。質量数の小さい同位体が新たな放射性核種を生成する。

セレン−79(60,000)

同上

同上

なし

同上

セシウム−135(230万)

同上

同上

なし

セシウム−133からより多くのセシウム−135がつくられる。セシウム137の存在により同位体の分離は困難。

ジルコニウム−93(150万)

放射化生成物

地下水への放出

なし

安定なジルコニウム同位体の存在はより多くのジルコニウム−93を生み出す。同位体分離には費用がかかる。

炭素−14(5,700)

放射化生成物

地下水への放出および・または二酸化炭素としての大気中への放出。生活物質中への取り込み

なし

中性子捕獲断面積が小さい。再処理の過程でしばしば気体として放出される。

塩素−36(300,000)

放射化生成物

地下水

なし

天然の塩素−35の存在がより多くの塩素−36を生み出す。

テクネチウム−99(210,000)

長寿命核分裂生成物

地下水放出。甲状腺に悪影響

あり。低速中性子を必要とする

いくつかの核変換サイクルを必要とする。

ヨウ素−129(1600万)

長寿命核分裂生成物

同上

あり。低速中性子を必要とする

同上。また、分離中の捕獲が困難。ターゲットの加工が困難。腐食問題が生じる恐れがある。

ウラン(主としてウラン−238、45億)

アクチニド原料物質

大量の使用済燃料を形成する(重量比で94パーセントに達する)。地層処分向けにスレート状にした超ウラン廃棄物より放射性が高い

なし。分離して低レベル廃棄物として処分されるか、劣化ウランのように使用される

ウラン−238の核変換はより多くのプルトニウム−239の生産を誘起し、廃棄物管理戦略としての核変換の目的にそぐわない。本質的に増殖炉経済を生み出す。

アメリシウム−241(430)

アクチニド

ガンマ線を放出。人体への侵害。地下水への放出(ウラン−233の親)。放射毒性

高速炉が望ましい

複数の分離および照射サイクルを必要とする。次のサイクルを一層困難にするキュリウムを生み出すことになる。

ネプツニウム−237(210万)

アクチニド

地下水への放出

高速炉が望ましい

より多くの短寿命の放射性やプルトニウム−238(88年)を形成。

キュリウム−244(18)

アクチニド

高い放射性をもちアルファ・ガンマ線を放出。使用済燃料の発熱に寄与

困難。高速炉を必要とする

高レベル廃棄物中の他のアクチニドからの分離は、取り扱い上および化学的な問題により困難。他のアクチニドとともに複数のリサイクルを必要とする。数十年かもしくは一世紀におよぶ貯蔵が必要となる可能性がある。下位のアクチニド(プルトニウムおよびアメリシウム)の照射で、より多くのキュリウム−244その他のキュリウムの同位体が生まれる。

プルトニウム(主としてプルトニウム−239、24,000)

アクチニド

プルトニウム−239の核分裂。放射毒性。骨に移行

非核分裂性同位体には高速炉が必要

中性子捕獲により高位の同位体と高位のアクチニド(アメリシウム、キュリウムなど)が形成される。

表は、経済協力開発機構/原子力エネルギー庁『アクチニドおよび核分裂生成物の群分離および核変換:第5回国際情報交換会議紀要』(モル、ベルギー、1998年11月25-27日、パリ:OECD/NEA 1999)470頁、および、経済協力開発機構/原子力エネルギー庁『アクチニドおよび核分裂生成物の群分離および核変換:現状および評価報告』(パリ:OECD/NEA 1999)より採用・追加したもの。

廃棄物を、資源、とくに水資源の重大な汚染を十分防げるよう、確実に隔離することにはきわめて困難な問題が伴うことから、処分場の場所選定はつねに科学的・政治的争点となり、一般公衆の多大な関心と処分場への反対を招いてきた。さらに、調査のためのサイト選定にしばしば政治的ご都合主義が伴うことも反対を強固なものにした。使用済燃料と高レベル廃棄物の処分場選定についてはさまざまな段階の計画が世界各地に存在するが、今もっていずれも高い科学的ハードルと一般公衆の強固な反対に直面している。米国は2010年に処分場を一カ所開設するという目標を掲げているが、候補であるユッカマウンテン処分場から将来世代の健康と環境を保護するための最終的な環境基準はまだない。注1

処分場選定にともなう困難と問題、とりわけきわめて長期にわたる隔離の必要性から、長寿命放射性核種を短寿命のものに核変換すれば、放射性廃棄物管理の問題に対する有力な解決策だとの見解が一部に生まれた。核変換は、長寿命放射性核種の核内にさまざまなタイプの核反応を誘起することによって成し遂げられる。核変換計画は長期にわたる隔離の問題を、数十年から数百年の貯蔵というはるかに簡単な問題に置き換えてくれる、という理屈である。

理論的な見通しに立つ核変換の擁護者たちは、これによって長期管理にともなう問題は大きく削減されると主張している。ときには、処分場の必要もなくなるなどと主張されることさえあるが、こうした主張は、核変換の実用性に関する研究が進むにつれて引っ込められていった。同時に、環境、廃棄物管理、コスト、および核拡散の問題が浮上してくるようになった。IEERは、廃棄物管理の概念としてみた核変換に伴うメリットと付随する諸問題の評価を行った。本論文はこのことについての我々の所見と勧告を要約したものである。注2

核変換の基礎

核変換とは、ある放射性核種を一つまたは複数の別の放射性核種に転換することである。核変換には原子炉でのある種の核反応を伴う。各種の原子炉スキームが提案されているが、これらはすべて共通の特徴を備えている。それは、短寿命の放射性核種または安定元素に核変換させる核反応を引き起こすために、大量のエネルギーを長寿命放射性核種の核に当てなければならないということである。

[図解]核変換プロセスの各段階

[左列・上から下へ]

[中央列・上から下へ]

[右列・上から下へ]

使用済燃料
再処理
プルトニウム、マイナーアクチニド
テクネチウム−99
ヨウ素−129
燃料およびターゲット加工
核変換炉
使用済燃料

核変換に向かない放射性核種
ウラン
短・中寿命核分裂生成物
核変換不能および核分裂生成物残渣およびその他のアクチニド

廃棄物管理
本文を参照
数百年の貯蔵または処分場
処分場
低レベル廃棄物の廃棄
中間レベル廃棄物の廃棄

上の図は理想化した核変換システムの主要素を示している。核変換する特定の長寿命放射性核種の分離には、スレート状にした候補放射性核種を再処理プラントで仕分けする必要がある。(核変換という場合、再処理は「分離」ないし「群分離」とも呼ばれる。)これによって、長寿命放射性核種を、原子炉内で照射し短寿命のものに選択的に転換させることができる。再処理をしないと逆向きの核反応が起こり、短寿命の放射性核種が長寿命の核種に転換されてしまう。加工施設は長寿命放射性核種で燃料および/またはターゲットを加工し、それはつぎに、原子炉、または加速器、重金属ターゲット、未臨界原子炉の組合わせからなる核変換施設に送られる。原子炉内で中性子が誘発する反応は長寿命核分裂生成物を短寿命のものに核変換し、プルトニウムなどのアクチニドを核分裂させ、新たな核分裂生成物を生み出す。これらの核分裂生成物の大半は短寿命であるが、新たな長寿命核分裂生成物も生み出される(下記を参照)。アクチニドはまた中性子も吸収して、質量のより大きなアクチニドとなりうる(下記を参照)。しかも、原子炉の効率がしごく低下するまでにすべてのアクチニドの核変換が終了するわけではない。そのため、大部分の長寿命放射性核種を核変換するには、再処理、燃料加工、原子炉施設を経由した数多くの経路が必要となる。しかし工夫を重ねた方式でも、あらゆる長寿命放射性核種を実際に短寿命のものに転換することはできない。軽水炉の使用済燃料の94重量パーセントを占め、きわめて長寿命で、一般に若干の核分裂生成物で汚染もされている分離ウランの転換は、非生産的である。なぜなら、ほぼすべてのウランの主要な核変換工程は、ウラン−238からプルトニウム−239への転換だからである。その他の長寿命核分裂生成物も、超ウランアクチニドの残渣と同様に処分を必要とする。よって、他の廃棄物管理や貯蔵施設と同様、核変換方式でも処分場がやはり不可欠である。核変換方式のメリットとこれに伴う難点は、核変換の物理学について若干の基礎を理解すると明瞭になってくる。

核変換の物理学

核廃棄物管理にとって、重要な核変換反応は二つある。すなわち中性子捕獲と核分裂とである。注3 目標は長寿命放射性核種を短寿命放射性核種に核変換することである。中性子のヨウ素--129およびセシウム--135による吸収はこのような反応である(カッコ内は半減期):注4

I-129 (1.6x107 年) + n → I-130m (9 分) → I-130 (12 時間) + e →Xe-130 (安定)

Cs-135 (2.3x106年) + n → Cs-136m (19秒) → Cs-136 (13 日) + e →Ba-136m (0.3秒) → Ba-136 (安定)

しかし中性子捕獲は、長寿命放射性核種の生成も誘起するので、セシウム--133の場合のように、核変換の目的にそぐわないことがある:

Cs-133 (安定) + n → Cs-134 (2.1年) + n → Cs-135 (2.3x106年)

使用済燃料中のセシウムは、セシウム−133とセシウム−135同位元素の混合物で、これらは容易には分離できないが、その理由の一部は、非常に放射性の強いセシウム−137同位体の存在が、セシウムの取り扱いと処理をきわめて困難、高価、かつ危険なものにしているからである。したがってセシウム−135を核変換する利益は、セシウム−133の中性子捕獲によってより多くのセシウム−135が生み出されることで相殺されてしまうことが容易にわかる。

以下の例は(半減期を括弧内に示した、有効数字は2桁)、プルトニウム−239が二つの引き続いた反応によって核変換される様子を示したものである:

Pu-239 (24,000年) + n →Pu-240 (6,500年) + n →Pu-241 (14年)

しかし、さらなる中性子捕獲が起こると、半減期の長いプルトニウム−242が生まれる:

Pu-241 (14年) + n → Pu-242 (380,000年)

このことは、核変換の核反応は、放射性核種が長寿命のものから短寿命のものへ全体的に変化し、新たな長寿命放射性核種が蓄積することのないよう、綿密に制御されねばならないことを示す。

たとえ、プルトニウム−239および240の中性子捕獲ですべてのプルトニウムが単寿命のプルトニウム−241に転換されたとしても、長寿命放射性核種の除去問題は解決されないことにも注意しなければならない。なぜならプルトニウム−241には完全な崩壊系列があるからだ。これが崩壊するとアメリシウム−241になるが、その半減期は430年である。アメリシウム−241はさらにネプツニウム−237に崩壊し、その半減期は200万年以上である。よって、長寿命アクチニド、たとえばプルトニウムを大きく削減するためには、一般に核分裂をさせるしかないのである。

核分裂核変換反応は、主として、安定な元素に崩壊する短寿命の核分裂生成物を生み出すが、これらの短寿命核分裂生成物の一部は崩壊によって長寿命の放射性核種にもなる。下の例は、テルルとモリブデンという二つの短寿命核分裂生成物の生成を示したものである。これらはともに一連のベータ崩壊をとげる。モリブデン−102の崩壊系列は、安定な(非放射性の)ルテニウム−102になるまで、短寿命放射性核種である。しかしテルルは崩壊すると長寿命のセシウム−135になる。

Pu-239 + n → Pu-240 → Te-135 (19 秒) + Mo-102 (11分) + 3n
 

I-135 (6.6時間) + e

Tc-102m (4.4分) + e

 

Xe-135 m (15分)

Tc-102 (5.3秒)

 

Xe-135 (9.1時間)

Ru-102 (安定) + e

 

Cs-135m (53分) + e

 
 

Cs-135 (2.3x106年)

 

 

提案されている核変換方式

核変換にさまざまな方式が提案されている。3つのタイプの原子炉(軽水炉、高速炉、未臨界炉)と2つのタイプの再処理が提案されている。表2は、各々の原子炉のタイプに応じた再処理のタイプと、核変換の候補となる放射性核種を示したものである。ほとんどの核変換方式は原子炉とそれに伴った再処理技術の組み合わせを用いる。たとえば、ある方式では、軽水炉に混合酸化物(MOX)燃料を用いるが、これはつまり、低濃縮ウランの使用済燃料から抽出したプルトニウムで加工した燃料である。MOX使用済燃料はついで再処理され、超ウランアクチニドが抽出されて高速中性子炉(一般に増殖炉と呼ばれる)燃料になる。高速炉燃料はつぎに再処理され、残渣のアクチニドは加速器駆動の未臨界原子炉の燃料になる。

[表2]:核変換方式

原子炉および中性子源

再処理および放射性核種

備考

軽水炉(LWRs)

(もっとも一般的な民生用原子炉)原子炉は臨界で低濃縮ウランまたはウラン--プルトニウム混合酸化物燃料を用いる。

再処理:湿式。

放射性核種:主としてプルトニウム、 テクネチウム-99、ヨウ素-129。

・重大な放射線ハザードを伴う質量の大きいアクチニドを高い割合で生み出す。

・再処理は大量の液体放射性廃棄物を生み出す。

・原子炉の安全問題。

・ほとんどのアクチニドを核分裂させられない。

・重い超ウラン元素が蓄積し、廃棄物管理問題を生む。

高速炉:原子炉は臨界で、プルトニウム、ウラン、または潜在的に、若干のマイナーアクチニドを含む燃料を用いることができる。

再処理:進んだ方式では、ほとんどが乾式。

放射性核種:プルトニウムとおそらくはマイナーアクチニド。テクネチウム-99とヨウ素-129も可能性があるが、炉心の外側の減速中性子線のターゲット内でのみ。

・高速炉の開発は絶え間ない問題に悩まされている。

・核分裂生成物が効率よく核変換されない。

・重い超ウラン元素が、軽水炉の場合よりは程度が少ないものの、蓄積する。

・原子炉の安全問題。

未臨界炉:加速器-ターゲットシステムは、未臨界炉に高速中性子を供給する。

再処理:再処理は全湿式、全乾式または両者の組み合わせ。

放射性核種:プルトニウムとマイナーアクチニド。テクネチウム-99とヨウ素-129も可能性があるが、炉心の外側の減速中性子線のターゲット内でのみ。

・未臨界炉はまだ研究開発の段階である。

・コスト高が予測されている。

・原子炉の安全性問題が未解決。

・核分裂生成物が効率よく核変換されない。

これらの方式はいずれも、基礎物理学的理由ないし実用上の理由から、ウラン、セシウム−135、炭素−14、その他の放射性核種を核変換することができない。表1は、長期管理の観点から問題となるさまざまな放射性核種と、核種の核変換方式との関連でみたそれらの現状を示したものである。

残渣廃棄物

核変換は高レベル廃棄物と使用済燃料の処分場を不要とするものではない。上に示した理論上の方式は、ほぼすべての長寿命放射性核種を除去するという実効性を備えた現実的なものと解してはならない。第一に、どんな核変換方式も懸案の放射性核種をすべて処理することはできない。なぜならそれらの核変換の多くは実効性がないからである(たとえば上述のセシウム--133とセシウム−135)。第二に、テクネチウム−99とヨウ素−129には100パーセント有効ということではなく、原子炉を何度通過させても、アクチニドの核分裂で新たな長寿命核分裂生成物が生み出されてしまう。第三に、アクチニドの核分裂も100パーセント有効ということではない。たとえば、提案された方式のいずれかを最大に見積もって超ウラン元素906トンを核変換すると考えると(米国の原子炉が免許期間中に生み出すと予測される量)、2.4トンの残渣が出る。残渣超ウラン廃棄物の構成は、高位のアクチニド同位体の方に偏るので、廃棄物はより放射性が高くなってしまう。これは放射線医学的リスクと複雑な処分上の問題をもたらす。最後に、セシウム−137は、セシウム−135とともに処分場で 処分されるであろうから、これから発生する大量の熱のため、処分に必要なスペースが非常に大きくなってしまう。注5 このような処分場の収容能力問題を軽減するには、それに付随する不確定要因やリスク、コストを覚悟の上で長寿命廃棄物を何百年か貯蔵しておくしかないであろう。

使用済燃料中の放射性物質の重量比94パーセントを占めるウランの始末ができない上に、かなりの量の長寿命超ウラン放射性核種と核分裂生成物にも対処できないことに加え、とりわけ湿式再処理が用いられた場合には、核変換はさらなる大量の廃棄物を生み出してしまう。(本号「原子炉からの放射性廃棄物」論文中のワンス・スルー LEU と MOX 燃料サイクルからの廃棄物産生に関するデータ参照)。とくに、これまで不当な申請がなされているように、ウランが「低レベル」廃棄物として管理されるとしたら、地層処分される一部の物質が低レベル廃棄物として処分されることになる。となると、すべての使用済燃料を適切に選定・設計された処分場で処分するのに比べ、より大きな総体的放射線医学的リスクを一般公衆に負わせる可能性がある。核変換は、原子力の段階的廃止という場合においても、実行までに数十年、完成には恐らく何世紀もかかる技術である。注6となれば、実際的、あるいは望ましい期間よりもはるかに長い間、廃棄物を制度的なコントロール下に置くことを余儀なくされるだろう。

核変換の含意するもの

上述した核変換方式のどれをとっても、核拡散、環境および人間の健康、安全、コスト、原子力の将来等について数々の問題点がある。

<核拡散>
どの核変換方式も超ウラン放射性核種の再処理を必要とする。こうした方式は核兵器所持国の兵器設計者を惹きつける物質をうみ出さないかも知れないが、しかし、これらが核兵器製造にも使用できる以上、非国家グループや核不所持国がその取得と使用に動くという、重大な核拡散リスクをもたらすであろう。高温冶金法のように核拡散しにくいと認められている再処理方法でさえ、兵器製造向けの純度をもつプルトニウムを抽出できるよう容易に修正がきく。この種の施設は実際、コンパクトなサイズだし、十分な安全措置を講じる上で潜在的な難しさがあるので、核拡散リスクを増大させる。さらにまた、廃棄物管理ツールとしての核変換を推進することは、この科学技術を広範囲に移転させることになる。ネプツニウム−237やアメリシウム−241のような同位元素の分離も、これらの放射性核種はいずれも、核兵器製造に用いることができるため、核拡散リスクを高めてしまう。兵器利用可能な物質の分離を大きく増加させるような方式の創設と実施は核拡散のリスクを相当に高めることになる。

<環境および健康>
再処理は、あらゆる核変換方式に必要であるが、燃料サイクルのうちでもっとも害のある要素の一つである。これは大量の廃棄物と大気中や水中への放射能の排出をもたらす。作業員、敷地外住民、さらには遠隔地集団に対しても、健康への影響を与えるとの十分な報告が得られている。たとえば、アイルランド、ノルウェー、アイスランドその他の諸国が、英国とフランスが自分たちのいわゆる「低レベル」放射性廃棄物を海洋投棄していることに中止を求めているのは、健康と環境上の懸念に基づくものである。燃料加工では液体廃棄物が生まれないため、その影響は主として作業員に対するものに限られ、その程度は再処理部門の作業員と同程度である。繰り返し照射した燃料の取り扱いにかかわる放射線医学的リスクは、重大な懸念要因である。最後に、数多くの核変換方式に必要となる高レベル廃棄物の輸送量増加により、輸送事故およびそれに付随する影響が発生する可能性が高まる。

<原子炉の安全性>
核変換には新たな原子炉技術および/または既存の原子炉の拡大利用が必要となる。これらの新たな原子炉のいくつかは「固有の安全性をもつ」と説明されてきた。しかしある種の安全特性を既存の原子炉と比べて高めることは、その反面、その他の安全特性を低め、新型原子炉に特有の新たな安全上の問題を生み出すことになる。たとえば、既存の原子炉で暴走反応防止に役立っているいくつかのフィードバック作用は、いくつかの核変換原子炉には存在しない。加速器をベースとしたシステムでは、中性子源の遮断能力と、原子炉が通常未臨界であるという事実とが、一定の安全上の利点を与えている。一方、これらのシステムは、緊急時においては中性子源の遮断能力に強く依存している。また、新しい燃料が原子炉内にあるか、原子炉が臨界超過になる恐れがある場合に、外部の中性子源が最大出力で作動しない保障も必要である。

<コスト>
核変換のためのコスト、とりわけアクチニドのかなりの削減を必要とする最新の方式は、途方もなく高価である。さらに、これらのコストを発電で埋め合わせるにしても、これによる歳入は到底十分とは思えない。核変換には、売電で若干の歳入が得られるにしても、開発費に加え、運転中でさえ多額の追加助成が何百億ドルも必要になると思われる。

<原子力の継続>
核変換という技術は、現世代の原子炉から出る廃棄物管理の文脈で(すなわち、原子力の段階的廃止の一部として)考えるだけでは不十分である。大半の核変換方式、とくに欧州と日本のものは、原子力の恒久的な継続を想定しており、核変換を新たな核燃料サイクルの一部とみている。核変換は、原子力に伴う現存する問題の一部を解決してくれるという期待から、原子力の持続的成長を保証するために不可欠な技術とみている人々もいるのである。

結論および勧告

我々の主たる所見は、核変換方式は長期的な廃棄物管理問題を解決しないということである。核変換が提唱されている廃棄物のほぼ全量はウランからなるが、これらは、現在の公式提案によれば、低レベル放射性廃棄物として扱われ、慎重に選択され設計された処分場での処分より、はるかに大きなリスクをもたらす方法で処分されることになっている。加えて、核変換物質の相当量は、核変換後も、長寿命核分裂生成物とともに残される。新たな大量の廃棄物が、新たな核拡散のリスクと高コストを伴って生まれるであろう。これらの重大な制約がありながら、核変換は、一部では引き続き「誘惑的な」研究分野であり「原子力オプション」を再活性化させるために不可欠なものとみられている。廃棄物管理技術としての核変換を後押しする評価は、分析に重大な欠陥があるし、原子力の継続を望む人々によって主としてなされているものである。

以上の結論に照したIEERの主たる勧告は、健全な科学技術的基盤がない以上、核変換は廃棄物管理技術としては放逐すべきだというものである。


用語

アクチニド[Actinide]

周期表の高位にある一群の元素で、ウラン、プルトニウム、ネプツニウム、アメリシウムなどを含む。超ウランアクチニドとは、周期表でウランより高位の元素、主としてプルトニウムのことをいう。マイナーアクチニドとはウランとプルトニウム以外のアクチニド(主としてネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)のことをいう。アクチニド群の元素は化学特性が広範に似通っている。

湿式分離[Aqueous separation]

放射性核種の分離を可能にするため、硝酸溶液などの液体溶媒を使用すること。

ベータ崩壊[Beta decay]

元素の放射性崩壊の過程において、その元素の核から電子または陽電子(電子と同一の粒子でプラスの電荷を帯びたもの)が放出されること。

崩壊系列[Decay chain]

安定な核に至るまでの一連の放射性崩壊。

乾式分離[Dry separation]

電気化学的技術を用いた放射性核種の分離。

核分裂生成物[Fission product]

重い元素の核分裂によって生み出された原子。核分裂生成物は放射性をもつ(一般にはベータ崩壊による)

中性子[Neutron]

陽子よりわずかに重い素粒子で、電荷をもたない。原子核は陽子と中性子から構成されている(陽子の数によって元素が決定され、核子の総数によって同位体が決定される)。中性子捕獲とはある核が中性子を吸収して新たな同位体をつくることをいう。

高温冶金法[Pyroprocessing]

金属ベースの核変換炉燃料向けに提唱されている乾式電気化学的分離の一形式。(例えば、加速器や高速炉による変換の燃料など。)

再処理[Reprocessing]

照射済核燃料からの元素の分離を総称した用語。

未臨界原子炉[Sub-critical reactor]

外部起源の中性子が内部で発生する中性子を補い、連鎖反応を維持することで運転されるようにつくられた原子炉。

臨界超過[Supercritical]

原子炉内の各核分裂が、続いて一回以上の核分裂を誘起し、制御不能な連鎖反応を引き起こす場合を言う。ただし、制御された方法で短期的に軽い臨界超過をつくり原子炉動力を増大させる、慎重に制御された場合を除く。

ターゲット[Target]

陽子加速器核変換方式の場合、加速器から出る陽子でたたかれたとき、セパレーションとよばれる過程を経て中性子を放出する物質。照射目的でターゲットに組み込む分離放射性核種のこともこう呼ぶ。


The Nuclear Alchemy Gamble: An Assessment of Transmutation as a Nuclear Waste Management Strategy (IEER Technical Report)


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Institute for Energy and Environmental Research

コメントはmichele@ieer.org までお寄せください。

Comments to Global Outreach Coordinator: michele@ieer.org
Takoma Park, Maryland, USA

Posted October 30, 2001


注1
放射性廃棄物の長期管理に関する問題についてより詳細な情報は、"Science for Democratic Action vol. 7, no. 4 (May 1999) "を参照されたい。

注2
核変換技術に関するIEERの詳細な評価報告は本ニュースレター発行後まもなく公表される予定である。[The Nuclear Alchemy Gamble: An Assessment of Transmutation as a Nuclear Waste Management Strategy, March 8, 2000

注3
核変換は光核反応という、高エネルギーの光子で核変換を誘起する方法でも行うことができる。光核変換方式も、本質的には、この論文で議論した方式と同様の大きな問題をかかえており、しかも開発はさらに遅れている。

注4
n = 中性子(neutron); e = ベータ粒子(beta particle); m =準安定(metastable) (ただちには基底状態までは崩壊しない核の励起状態。)

注5
この場合、ストロンチウム−90も処分場に廃棄される。というのは半減期がセシウム−137とほぼ同じだからである。

注6
National Research Council.  Nuclear Wastes: Technologies for Separations and Transmutation.  Washington: National Academy Press, 1996. p. 5 and OECD/NEA  Status and Assessment Report 1999, p. 204. 一部の核変換方式では中寿命核分裂生成物が崩壊するまで600年間貯蔵される。 (参照 Rubbia et al, Fast Neutron Incineration in the Energy Amplifier as an Alternative to Geologic Storage: The Case of Spain, CERN/LHC/97-01 (EET), Geneva: European Organization for Nuclear Research, February 17, 1997).